About Lexicon

  31期の三上先生が、全国学会を開催される
                                                本 田 壮 一(29期)
 

 2月26日の役員会(Zoom)で、東京支部の濱本恒男先生(医学部23期)より、「全国規模の医学会を開催する同門をホームページに紹介していこう」という意見があった。31期の三上靖夫教授(京都府立医大)が、「第62回 日本リハビリテーション医学会学術集会」を6月に開催される。届いた開催概要集や、学会ホームページ1)、公式SNSからの情報を紹介する。

 2025年6月12日(木)~14日(土)に、国立京都国際会館(京都市)で開催される。第一次世界大戦中(1917)、アメリカの陸軍病院に「身体再訓練(現在の機能訓練)・リハビリテーション部門」が設けられた。身体に障がいはあるが、命のある傷病(しょうびょう)兵を社会復帰させ、さらに職業復帰させようという目的で、リハビリテーションは始まった。その後、リハビリテーションは「身体的・精神的な部分の能力を回復させる活動」という意味で用いられている。高齢者が増加した現代では、栄養管理とともに地域包括ケアの根幹となっている。

 会長の三上靖夫先生1)は、膳所(ぜぜ)高校(滋賀県)から、徳島大学に進学し、私の2期後輩になる(図1・2)。学生時代は、柔道部やたけのこ連(阿波踊り、4年生では、連長を)で活躍された。海部郡牟岐町内妻で行った柔道部の合宿はよい思い出と聞いた。卒業後、京都府立医大の整形外科へ入局(1985年)。2014年より、同大学のリハビリテーション医学の病院教授、19年教授に昇任された2)。全日本柔道連盟の医科学委員会委員長や守山市(滋賀県)の柔道連盟の会長を務められている。

 今回の学会のテーマは、「精力善用/自他共栄」。嘉納治五郎(1860~1938、柔道の創始者・教育者)の、柔道の目指すものは社会に貢献できる人材育成であるという理念である。鍛えた心身の力を最も有効に活用し、他者や社会との融和・協調を通して世の中に尽くしていくと解釈され、研究や臨床に通じると考えると(三上)。柔道家に加え、青藍会会員や、徳島大学、徳島ゆかりの演者の講演を多数企画しており、以下に列記する。

 まず、三上会長(リハビリテーション医学・医療から学んだこと~医療従事者が持つべき精力善用・自他共栄の心~)。和泉唯信教授(41期、脳神経内科)は、「柔道一直線から難病の治療法開発に取り組む」。徳島大学整形外科・リハビリテーション科より、西良浩一病院長(34期、アスリートの腰痛とアスレティック・リハビリテーション)や、松浦哲也教授(39期、少年野球肘検診~スポーツ医学における精力善用・自他共栄~)、酒井紀典先生(43期、腰部スポーツ障害におけるリハビリテーション診療の意義)、佐藤紀先生(48期、医師が知っておくべき院内転倒の知識と対策)らが演壇に立たれる。

 柔道仲間から2名。永廣信治院長(吉野川病院、脳外科医)は、「柔道による頭部外傷の撲滅をめざした取り組み(シンポジウム:柔道とリハビリテーション医学・医療との接点)」。佐田政隆教授(循環器内科)は、「心臓リハビリテーションのサイエンス」(図1)。
  図1青藍西角先生24.7
          左より:三上、本田、西角彰良(29期)の諸先生(神戸、2024年7月)

 
 陳隆明所長(32期、 兵庫県立総合リハビリテーションセンター)は、「福祉のまちづくり研究所における高齢者のためのスマート住空間整備の取り組みの紹介」。そして、二川健教授(33期、医科栄養学科)は、「酸化ストレスを介した無重力や寝たきりによる筋代謝異常の分子メカニズム(シンポジウム:宇宙医学とリハビリテーション医学)」で、登壇される。

 県医師会介護保険委員会の武久洋三先生(博愛記念病院)は、「リハビリテーション医療を改革しよう」。山上敦子先生(32期)は、「地域で生きる/地域と生きる/医療法人久仁会の取り組み(シンポジウム、地域を元気にするリハビリテーション医療)」の演題で。同委員会委員の私も、「高齢化が進む地域で必要とされるリハビリテーション医療」というシンポジウムでお話する機会をいただいている。抄録を示す。

演題名:「自他共栄」を願う地域包括ケア・災害不安・人手不足の小病院では

(Rehabilitation in a small hospital on community-based integrated care, disaster and staff shortage)

所属:1)美波町国民健康保険美波病院、2)徳島大学大学院医歯薬学研究部 循環器内科学分野、3)京都府立医科大学大学院 リハビリテーション医学、4)修誠会 吉野川病院

演者:〇本田壮一1)、佐田政隆2)、三上靖夫3)、永廣信治4)

本文:

当院は、徳島県南部にある50床の二次救急病院である。内科や外科、整形外科、脳神経外科、耳鼻科を標榜しているが、常勤医は2名で非常勤医師への依存が高い。町内の日和佐診療所・阿部診療所に常勤医はおらず、本田はその所長も兼任している。病院のある海部郡美波町は太平洋に面し、約100年に1度のサイクルで襲来する南海トラフ地震・津波のフロントラインになる。住民の高齢率は50%を超え、人口減少が加速している。そこで、美波病院は「治す医療」から「治し支える医療」への転換に伴い2016年、高台の免震建物にリハビリテーション室を設置した。現在、理学療法士2名、作業療法士2名の体制で、地域包括ケア病床15床を運営している。【連携】地域医療連携室の社会福祉士と看護師が、退院調整にあたっている。運動器や脳血管障害、呼吸器リハビリテーションが中心だが、1泊2日の研修を修了しがんリハビリテーションも開始した。超急性期病院からの連携や、地域包括ケアとしての施設へつなぐ生活期リハビリテーションを行っている。【教育】医学科学生の公衆衛生学・地域医療学実習や、初期臨床研修医を受け入れている。徳島県地域包括ケアシステム学会や、日本心臓リハビリテーション学会、京都府リハビリテーション教育センター講座(ウェブ)などで、リハビリテーション医学の知識をブラッシュアップしている。共同演者らが慕う嘉納治五郎の「自他共栄」を、小病院から地域へ還元したいと願う。


 三上会長はご多忙の中、全ての抄録に目を通し、これまでの学会と違った角度での学術集会を目指している。また、青藍会でも31期同期会を精力的まとめられており、徳島大学70周年を祝う6学年合同のアラ還暦同窓会(2019年11月)にもご尽力いただき、人望が厚い(図2)。

 図2青藍赤池先生2017年7月
          左より:本田、三上、赤池雅史(31期)の諸先生(蔵本、2017年12月)

     
 これからの超高齢社会で、さらに注目されるリハビリテーション医学を学ぶよい機会と考える。6月の京都へ、同窓や勤務のリハビリテーションの療養士などの多数の参加を期待している(美波病院内科)。

【参考URL】

1)第62回 日本リハビリテーション医学会学術集会

https://www.congre.co.jp/62jarm2025/

2)京都府立医科大学大学院 リハビリテーション医学(三上靖夫教授)

https://www.kpum-reha.com/